今回から3回にわたって「たばこ」がテーマになります。
貝原益軒はまず、「たばこ」の由来について説明しています。
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「たばこ」は、天正(てんしょう)時代から慶長(けいちょう)時代のころに、外国から渡ってきたものだ。
「淡婆姑(たんばこ)」と書くこともあるが、これは和語ではない。えびすの言葉である。
実は、近ごろの大陸の本には多く載っていて、「烟草(エンソウ・けむりぐさ)」とも言われている。
朝鮮半島では、「南草(ナンソウ・みなみぐさ)」と言う。
我が国では、「たばこ」は「莨菪(ロウトウ)」という植物だという人もいるが、「たばこ」は「莨菪(ロウトウ)」は別物である。
(貝原篤信 編録『養生訓』巻第四 飲食 下から)
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※ 天正時代は、1573年から1592年まで、慶長時代は、1596年から1615年までの時代です。ちょうど安土桃山時代から江戸時代の初期で、いわゆる南蛮貿易が盛んだった頃に当たるのでしょうか。
益軒は「たばこ」というのは、我が国に古くからあるものではなく、「せいぜい百年ほど前に、異国から入ってきたものだ!」と強調したかったようですね。(T.K.)
底本は、千葉大学附属図書館によりデジタル化され一般公開されている『養生訓』(貝原益軒の没後百年にあたり刊行された版)です。