みなさまこんにちは😄
気づけばすでに立冬で、朝晩は寒くなってきましたね!
ところで、先日11/8に、こちら千葉大学墨田サテライトキャンパスで、「第9回 墨田漢方健康セミナー」が開催されました。
『東洋医学を活用!冬の冷え対策』というテーマで、私は「冷え症には漢方を!」というタイトルでお話させていただきました。
その内容をこちらで紹介させていただきます。
話の流れとしては、Ⅰ.「冷え」はなぜ体に良くないのか? Ⅱ.「冷え」の原因は? Ⅲ.「冷え」を漢方医学的にとらえると? Ⅳ.「冷え」を改善させる対策 です。
Ⅰ.「冷え」はなぜ体に良くないのか?
「冷えは万病のもと」と言われますが、
①
体内の血流が悪くなると、栄養や酸素が細胞の隅々まで行き渡らなくなり、代謝が低下する
②
体内の血流が悪くなると、血管壁に老廃物がこびりつき、動脈硬化を起こし、血管が詰まりやすくなる
③
体内の血流が悪くなると、酵素が働きにくくなり、免疫力が低下し、感染症やがんのリスクが高くなる
その結果、頭痛、肩こり、腹部膨満感、便秘、下痢、頻尿、かぜ、がんなどといった病気をもたらすこともあります。
つまり、「冷えは病気の始まり(=未病)」とも言えます。
「未病」というのは「冷え」だけでなく、例えば「口内炎を繰り返す」、「かぜでも花粉症でもないのに鼻水が止まらない」、「寝ても疲れが取れない」などの漠然とした不調です。
西洋医学的には、「検査で異常がない」なら「病気ではない」とみなされ、治療薬もないのですが、東洋医学的には、「未病のうちに治療を」と考え、漢方薬が有効となります。
ただし、貧血や甲状腺機能低下症など、病気が原因となって冷え症状が出ることもありますので、血液検査などで異常がないのを確認する必要があります!
Ⅱ.「冷え」の原因は?
①
熱生産の低下……筋肉を動かすことで熱が生み出されますので、筋肉量が少ないと熱生産が低下します。また、「代謝」が悪くても熱生産が低下します。「代謝」とは、食事によって得た栄養と呼吸によって取り込んだ酸素を使って、体に必要な物質や熱エネルギーを生み出す化学反応のことなので、食事量が少なかったり、貧血(酸素を運搬する赤血球が少ない)だったり、甲状腺ホルモンが低下していても熱生産が低下します。
②
熱運搬の障害……血液には栄養や酸素を全身に運ぶ役割があります。①で代謝によって熱が作られることは説明いたしましたが、血液がドロドロで毛細血管が機能しなかったり、循環が滞っていると、栄養や酸素が細胞に届かないため代謝が落ちてしまいます。たとえば動脈硬化で、動脈の壁が硬くなって厚くなって弾力を失った状態や心不全で心臓のポンプ機能が低下し、全身に十分な血液を送り出せなくなる状態です。また、ストレスや恐怖など、体が危機に直面すると、交感神経系が刺激され(アドレナリンが出ている状態)それが過剰となると血管収縮も過剰となり、血液が流れにくくなります。
★「交感神経」についての補足しますと★
「交感神経」と「副交感神経」を合わせて「自律神経」と言います。
「自律神経」は自分の意志ではコントロールできない神経です。心臓の鼓動や呼吸や消化や体温調整など、生命維持の司令塔です。血管を収縮させたり拡張させたりする役割もしています。
「交感神経」は活動的な状態(とくに活動開始時、危険を感じた時、興奮した時、ストレスを感じた時、運動時など)に優位になります。
一方「副交感神経」はリラックスした状態(とくに睡眠中、食事中、運動後など)に優位になります。
運動している時や危険を感じた時には交感神経の働きで心臓がどきどきと活発に動いたり、食事をしている時には副交感神経の働きで胃腸の働きが促されるなど、知らず知らずのうちに自律神経が体をサポートしています。
今回は「冷え」の話なのでそちらに戻りますと、
「寒い」と皮膚の温度センサーが感知すると、その情報が脳の視床下部にある視索前野に伝達され、そこから司令が出されて、交感神経が手足の血管を収縮させます。なぜかというと、寒さに伴って、重要な臓器が集まる体の中心部の温度が下がってしまうと様々な体の機能が低下してしまうため、手足の血流を減らして、体の中心に血流を集めるためです。その結果、体温(体の中心部の温度)は保たれ、手足は冷えます。
余談ですが、非接触型体温計でおでこと足の甲の温度を測定した時、足の甲がおでこよりも温度の低下が3℃未満であれば正常範囲なのです!そして、重度の冷えの方はその温度差が10℃以上にもなるのです!!
③
熱放散の増大……汗腺の機能が弱く、自然発汗が過剰な状態(本来は、体温が上がると体の水分を汗として放散させることで体温を一定に保つ働きがありますが、体力消耗状態などで、必要以上に発汗してしまい、)体温が下がってしまうことがあります。
Ⅲ.「冷え」を漢方医学的にとらえると?
漢方医学的には、体を構成する基本的な要素として「気・血・水」があります。3つがお互いに関わり合いながら働いており、そのバランスが崩れると不調を起こします。
(※気の不調には上記「気虚」「気滞」以外に「気逆」もあります。)
気・血・水の不調に伴う症状として、「冷え」の原因となるのは、「気虚」、「血虚」、「瘀血」、「水滞」です。
つまり、同じ「冷え」でも、漢方医学的にはさまざまな原因があり、もちろん原因が一つとは限りません。
Ⅳ.「冷え」を改善させる対策
冷え症を治すのに大事なことは・・・?
養生です!!
養生とは、健康を維持、増進させるための生活習慣(食事、運動、睡眠など)のことです。
「漢方=漢方薬」と思われることもよくありますが、
「漢方医学」には「漢方薬」だけではなく、「鍼(はり)」、「灸(きゅう)」、「按摩(あんま)」、そして「養生」があります。
【食事について】
養生は食事、運動、睡眠、いずれも大切ですが、その中でも強調したいことは「体は食べたものでできている」ということです。
「食事」は単なる栄養補給、空腹を満たすものではなく、心身を健やかに保つための「薬」ともいえます。良薬にも、毒薬(?)にもなると思うと重要ですね!
※食材については、資料によっても内容が異なることを御了承ください。
今回は「冷え」がテーマなので、まずはお勧めの体を温める食材(陽性食品)を紹介します。
◆寒い地域で採れるもの…………ねぎ、にら、かぶ、白菜、りんごなど
◆色の濃い(黒い・赤い)もの…黒豆、黒胡麻、黒糖、南瓜、人参、小豆、赤身の肉や魚など
◆土の中に向かって育つもの……ごぼう、にんじん、生姜、ニンニクなど
◆塩分が多い発酵食品……………みそ、漬物など
◆スパイス………………………生姜、山椒、胡椒、サフラン、クローブ(丁子)、クミンなど
逆に体を冷やしてしまう食材(陰性食品)には
◇暑い地域で採れるもの…………パイナップル、マンゴー、バナナ、キウイ、コーヒーなど
◇夏野菜や水分の多いもの………トマト、きゅうり、なす、レタス、キャベツ、スイカ、メロンなど
◇色の薄い(白い)もの…………大根、もやし、牛乳、ヨーグルト、白砂糖、小麦(パン、麺)など
※冷たいアイスクリームだけではなく、パンやクリームたっぷりのケーキやサクサクのクッキーなど、白砂糖、小麦、乳製品の入ったお菓子は冷えの原因になります😭
😊そこで、提案なのが、上手にスパイスを「ちょい足し♪」することです😊
例えば、コーヒーにシナモンパウダーをふりふり♪
紅茶に下ろし生姜を♪でぽかぽか(チャイもお勧めです)
夏野菜のナスには生姜を♪ 小麦粉でできているうどんに七味唐辛子を♪
そして、大根は生で食べると体の熱を取ってくれる陰性食品ですが、生姜と煮たり、お鍋に入れてネギやニラなどと食べると温まります!
そして、野菜料理の調理法に悩んだら味噌汁かカレーにしてしまえば、体を温められます!
【運動について】
冷えない体にすべく、血流を改善させるために、日常的に適度な運動を心がけましょう。
無理なく、楽しく続けることが重要です。
スクワット、昇降運動、ウォーキング、ストレッチ、ヨガなどで、下半身の筋肉を動かすことを意識しましょう。短時間でいいので、まずは動かすことが重要です。ただし、息が切れるような運動は交感神経を刺激してしまいますので、夜は控えた方がいいです。
😊運動に時間を取られたくない方などは、家事のついでに(台所に立ちながら、洗濯物を干しながら、お掃除しながら)行うのもお勧めです。また、例えば洗面所で歯磨きしながら、もしくはトイレ後に、あるいは入浴後に習慣的にやるのもいいかもしれません😊
【睡眠について】
中国の古典医学書『黄帝内経(こうていだいけい)』では、冬の養生法として、
「この季節には、早く眠り、日の出に合わせてややゆっくりと起き、心静かに過ごし、寒冷を避け温かく保ち、………」
と、早寝遅起きを勧めています!!
冬はしっかり寝て体力を温存し、春に備えて生命力を蓄える時期であり、この時期に無理すると春先に体調を崩しかねません。
ここで、冷えと睡眠の関係についてです。
もう一度自律神経の話になります。
日中は「交感神経」が優位になることが多く、活動的神経で、体温を上昇させます。
一方、夜、リラックスした状態になると「副交感神経」が優位になりますが、体にたまった熱を下げるために手足の末梢の血管を拡張させて手足の末梢の血流量を増やして熱放散します。その熱の変動が眠気となり、体は眠りの体勢に入っていきます。赤ちゃんが眠くなると手足が温かくなるのと同じメカニズムです。
😞もし手足が冷えていると、夜になっても「これ以上体温を下げてはいけない」という体の防御機能により、「副交感神経」による熱放散が行われづらいため、寝つきが悪くなります。
😞また、ストレス、緊張状態、興奮状態、PCやスマホの操作によって「交感神経」優位となってしまうと、寝つきが悪くなったり睡眠の質が低下します。
冷えない体を作るためにも快眠は重要です!
というわけで、快眠6か条を紹介します!
【入浴について】
「シャワーだけ」では体の表面しか温まらず、「冷え」は改善しません!!
副交感神経を優位にして快眠に導くためにも、38~40℃の「ぬるめのお湯」で10~30分間、
肩までしっかり浸かりましょう。
入浴剤は炭酸系(二酸化炭素の泡で血管拡張効果)がお勧めです。
入浴後には保湿クリーム(特にカサカサしやすいところへ)を塗りましょう。皮膚が乾燥しているのは漢方では「血虚」という状態なのですが、クリームで外側から栄養(潤い)を補うことで、そこに内側から栄養を取られずに済むので、冷え予防にもなります。
【冷えに効く漢方薬で代表的なもの】
最後になりましたが、冷えに効く漢方薬で代表的なものを並べました。
私どもが実際に漢方薬を処方する際には、自覚症状を問うだけでなく、漢方診察をして、「気・血・水」をはじめとする漢方医学的な様々な指標で病態を捉えます。
ですから、自覚症状(冷えの部位など)によって示した下記のものはあくまで参考までにしていただければと思います。
八味地黄丸(7)………臍下の冷え、腰痛、夜間頻尿など
当帰芍薬散 (23)………腰から下の冷え、貧血、むくみなど
当帰四逆加呉茱萸生姜湯(38)………手足末梢の冷え、しもやけなど
人参湯(32)…………心窩部の冷え、胃の痛み、顔色が悪いなど
大建中湯(100)………臍周囲の冷え、腹部膨満感、腹痛など
苓姜朮甘湯(118)…………腰回りの冷え、下半身が重だるい、多尿など
麻黄附子細辛湯(127)………頸筋の冷え、全身倦怠感、悪寒など
長々と失礼いたしました。
冷える方にはこれからの季節、つらくなってまいりますが、こちらの内容が冷えでお困りの方に、少しでもお役に立てれば光栄です。
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お困りの方はぜひ、お越しください😊
千葉大学墨田漢方研究所 和泉裕子