薬用植物園ではアヤメやカキツバタが開花しています。
どちらもアヤメ科の植物です。
どちらも生薬としては一般的ではなく、観賞目的が主です。アヤメ科で生薬となるものはないか調べてみました。
それがこちら、
ヒオウギです。開花は初夏のころです(6月)。
生薬は「射干(やかん)」といい、ヒオウギの根茎を用いた生薬です。神農本草経下品(作用・副作用が強いものが多い)に分類され、かつては米のとぎ汁に浸し、竹葉を用いて煮てから日干して使うなど手間がかかるものであったようです。
ヒオウギ:葉が扇状に広がるため
射干:茎が射る矢の長竿のようである、ということから命名されました。
また、ヒオウギの種子は黒々しているので、烏羽玉とも呼ばれ、万葉集では黒や夜の枕詞として使われているそうです。
射干の効能としては、清熱解毒、利咽、袪痰作用があり、咽頭痛、咳、痰などに用いられます。
代表方剤としては、射干麻黄湯があります。喘息などで咳や痰のある時に使用します。
構成生薬:射干、麻黄、生姜、五味子、細辛、紫苑、款冬花、大棗、半夏
実はこの射干麻黄湯は、新型コロナウイルス感染症の治療薬として中国で使われる漢方薬、清肺排毒湯(せいはいはいどくとう)の構成要素となっています。
すでに後漢の時代に成立していたお薬が現代に活かされていて、漢方はまだまだ学ぶべきものが多いと感じます。(S)