今年のNHK大河ドラマ「光る君へ」が描いている平安時代中期には、日本の伝統医学にとってもたいへん重要なできごとがありました。それは、我が国で編纂された現存する最古の医学書『医心方(いしんぽう)』30巻の誕生です!
『医心方』は、当時の最新医学であった隋・唐の医学書から引用編纂した医学書で、引用された底本の数は200書以上になると言われています。
『医心方 巻第一』東京国立博物館所蔵
著者は、丹波国出身で典薬寮(てんやくりょう)医官となった丹波康頼(たんばのやすより)(912-995)です。984年(永観2年)11月28日、康頼が73歳の時に宮中に献上されました。
「光る君へ」では、坂東巳之助さん演じる円融(えんゆう)天皇から、本郷奏太さん演じる花山(かざん)天皇へ譲位が行われた直後の時期ですね。
その後、平安時代は宮中でも火災などが起きたようであり、康頼が献上した本は失われてしまったようです。しかし、平安時代後期の最古写本は現在東京国立博物館所蔵となっていて、国宝に指定されています!TK
図の出典:「国立文化財機構所蔵品統合検索システム」(https://colbase.nich.go.jp/collection_item_images/tnm/B-3178?locale=ja#&gid=1&pid=4)の一部を表示
参考文献:
医心方一千年記念会編集「医心方1000年のあゆみ」(1984年)
小曽戸洋著「新版 漢方の歴史」大修館書店(2014年)
小曽戸洋著「針灸の歴史: 悠久の東洋医術」大修館書店(2015年)
安部郁子「文庫の窓から:医心方」臨床眼科 75巻12号(2021年)