番組では、まず、昨年の夏に新型コロナウイルスに感染して2週間入院された庄司智春さんが、「退院後も胸に違和感が残ってしまい、趣味のランニングも控えています。」と語ります。
そこで、庄司さんが今津嘉宏先生(芝大門 いまづクリニック)の漢方医学的診察を受け、舌を観察されたり、お腹を触診されたりして、「胃腸の状態が弱り、体の中心が冷えている」ことがわかったため、「人参養栄湯(にんじんようえいとう)」という漢方薬のエキス剤を処方されました。
今津先生は庄司さんに、「この漢方薬は、胃腸の働きを改善させ、体も温めて、なおかつ、肺の状態も良くしてくれる薬で、体全体のバランスを取りながら体調を持ち上げてくれるイメージです。」と説明されました。
最初は、庄司さんは「人参養栄湯」の効果は半信半疑でした。しかし、その後の1ヶ月間この漢方薬を1日3回飲み続けた結果・・・
1ヶ月後の受診時には、舌の状態も、お腹の状態も改善し、更に、胸の違和感もやわらいで、ランニングも無事再開でき「いやーーーうれしいーー!」とコメントされていました。
新型コロナウイルスに対する漢方薬の効果も期待できるところですが、その後のスタジオでの大野智先生(島根大学医学部附属病院)のコメントでは、「新型コロナウイルス感染症に対する漢方薬の効果は現在検証中です。」とのことでした。
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テレビ画面を通して、「人参養栄湯」を内服する前の庄司さんの舌の所見だけを拝見すると、専門的には「舌質の厚みはやや足りないが、舌質の色は淡紅色でほぼ正常。舌苔については、湿潤した白苔が舌全体を覆い、舌の中央では白膩苔(はくじたい)が生じて、僅かに黄膩苔(おうじたい)も認められ、部分的に脱落所見あり。」となります。
これは、一般的には、いわゆる上気道炎をこじらして、気管支炎から肺炎近くまで行ってしまってやっと治ったという方にしばしば見られる舌の状態で、まだ「餘邪(よじゃ)」と言って、東洋医学的には悪い病毒が完全に取り除けていない状態を意味するので、直接補って温めるという治療には結びつきませんが、きっと、庄司さんの脈が思いのほか細かったり弱かったり、お腹が結構冷えていたという所見を総合的に考えて、今津先生は「人参養栄湯」を選択されたものと推測します。T.K.