では、今日から『養生訓』を少しずつ現代文に意訳していきたいと思います。
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人は誰でも、父母がいて初めて生まれ出て、さらに現在の自然環境の中で育って来ました。自然の恵みと父母のお陰で生まれ育ってきたのですから、現在の自分の身体は自分だけのものではありません。自然の恵みと父母のお陰で自分の身体があるのですから、慎んで自分の身体を大切にし、損なわないようにして、できる限り天寿を全うするようにすべきです。
そのためには、「養生の術」を学んで、よく自分の身体を保ちましょう。これは、人生の中で最も大切なことです。人の身体はたいへん貴重な存在で、世の中の何物にも代えがたいものです。しかし、これを養う術を知らずに、ただやりたいように振る舞って、自分の身体を損なって命を縮めることはたいへん愚かなことです。
(貝原篤信
編録『養生訓』巻第一 総論 上から)
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こんな書き出しで、『養生訓』は始まります。
貝原篤信(あつのぶ)というのは、貝原益軒の本名です。
私も日々の慌ただしい生活の中で、「自分の身体」を忘れておりましたが、『養生訓』を読んで、認識を新たにしております。(T.K.)
底本は、千葉大学附属図書館によりデジタル化され一般公開されている『養生訓』(貝原益軒の没後百年にあたり刊行された版)です。
http://tabito.ll.chiba-u.jp/da/koisho/56853/?lang=0&mode=0&opkey=R145180270346168&upmetapid=309&cidx=1