どうして希望者全員にPCR検査をしないの?(その1)

2020年2月24日月曜日

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最近、当診療所の外来でもしばしば新型コロナウイルスのことが話題になることがあります。

ある患者様から「なんで希望者全員にPCR検査をしてくれないんでしょうね?」とご質問頂きました。「それはですね・・・」とご説明し始めたのですが、全てご説明するには時間がかかることに気づき、「ブログに書いておきますので、後でご覧になって下さい。申し訳ございません!」と申し上げました。そこで、簡単にまとめて書いてみます。

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PCR(ピーシーアール)検査というのは、そのウイルスを特徴づける遺伝子を増幅する検査です。新型コロナウイルスの遺伝子だけが増幅するように設定してPCR検査を行うと、新型コロナウイルスが存在していれば陽性になるという仕組みです。

ただ、このPCR検査はなかなか手間がかかる検査で、下記のように注意しなければならない落とし穴がいくつかあります。

1,最初に、外来や病室で、たんや、のどの粘液を採取します。しかし、感染者のたんやのどの粘液でも、ウイルスが入っていないか、ごく少量しか入っていない部分を採取してしまうと、検査結果は陽性になりません。

 例えば、インフルエンザにかかっていても、まだウイルスが十分増えていない時期だと、鼻の奥をグリグリやられてつらい思いをしても、陰性になってしまうことと同じ理由です。

2,次に、検査室で、たんや、のどの粘液から、新型コロナウイルスの遺伝子を取り出す作業を行います。しかし、新型コロナウイルスの遺伝子はRNA(アールエヌエー)という物質からできているので壊れやすく、作業に慣れた方が行わないと全く取り出せなかったり、ごく少量しか取り出せなかったりすることがあり、検査結果は陽性になりません。

 以前は、私も、細胞からRNAを取り出して、PCRを行うという作業を毎日のようにしていた時期がありますが、RNAを扱う時は非常に神経を使いました。

3,最後に、検査室で、PCRを行います(正確にはリアルタイムRT−PCR)。通常は、結果が出るまで5−6時間かかってしまいます(ジーンソックなど、30分間以内に結果が出る装置もあるようですが、まだ一般的ではありません)。

 実は、このPCRの段階でも落とし穴があります。新型コロナウイルスの遺伝子だけが増幅するように設定するのですが、万一、新型コロナウイルスの遺伝子に変異が起こった場合は、PCRがうまくかからない可能性があります。

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そんな訳で、PCR検査は万能検査ではありません。新型コロナウイルス量は、インフルエンザウイルス量に比べて1/100~1/1,000と言われていますので(日本感染症学会)、遺伝子の量ももともと微量であり、1回の検査で新型コロナウイルス感染の方がきちんと陽性になる確率はせいぜい50%程度なのではないかと私は想像しています。

つまり、新型コロナウイルスに対する1回のPCR検査は、100点満点でせいぜい50点の検査だという認識を持つことが基本になります。(T.K.) 

次回のブログに続きます)
どうして希望者全員にPCR検査をしないの?(その2)

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