どうして希望者全員にPCR検査をしないの?(その3)では、
「希望者全員にPCR検査を行ってしまう」と、費用と労力をかけてPCR検査を行っても、的中率がたった0.5%になってしまうことをご説明しました。
では、私たちは「新型コロナウイルスに対するPCR検査」をどのように活用したら良いのでしょうか?
現在、厚生労働省では、下記のいずれかの症状があるときに「帰国者・接触者相談センター」へ相談するよう促しています。
・風邪の症状や37.5℃以上の発熱が4日以上続いている(解熱剤を飲み続けなければならないときを含む)
・強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある
これは、新型コロナウイルス感染症の「上気道炎症状が長引き、強いだるさを感じることが多く、悪化すると肺炎になる」という臨床的特徴を意識した基準だと思われます。
上記のような症状をお持ちの方が「帰国者・接触者外来」を受診し、担当医師により新型コロナウイルス感染症の可能性があると判断されれば、PCR検査を受けることになると思います。
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今回のブログでは、このようにして担当医師から新型コロナウイルス感染症の可能性があると判断された方100名の中に1名だけ本当に新型コロナウイルス感染者がいる状態を想定し、かつ、医師によりPCR検査の必要性があると判断された方全員がスムーズにPCR検査を受けることができる体制になっていることを前提に的中率を計算してみます。
上の図のデータから、前回のブログと同じように的中率(正確には陽性的中率)を計算しましょう。すると、不思議、不思議。PCR検査の的中率がなんと83%にアップするんです!
すなわち、臨床的に感染が疑われる方に絞り込んでPCR検査を活用すれば、PCR検査の信頼性がぐっと高まりまることがわかります。
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今回の検討の前提は、「医師によりPCR検査の必要性があると判断された方全員がスムーズにPCR検査を受けることができる体制があること」です。是非、この体制が全国で確保できるよう、ご関係の方々にお願いしたいと存じます。
そのためにも、「新型コロナウイルス感染症」を疑う症状について、私も含めて皆よく勉強しておくべきだと思います。過去のブログで私が「新型コロナウイルス感染症」の症状にこだわってきた理由はここにあります。
新型肺炎と漢方薬(初期)
新型コロナウイルス感染症の初期症状の特徴は?(日本)
確かに最初の2−3日は普通の感冒との区別はつかないようです。しかし、4日めになっても発熱や上気道炎症状が治る気配がなく、体がとてもだるくなり、息苦しさも出てきて、医師の診察でインフルエンザや細菌感染症など他の疾患が否定できれば、「新型コロナウイルス感染症」が強く疑われます。(T.K.)
(※)「新型コロナウイルス感染の方が、正確に陽性になる確率」を感度と言います。「新型コロナウイルスに感染していない方が、正確に陰性になる確率」を特異度と言います。