7月の本ブログで「ハスの花」についてのお話がありましたが、今日は、ハス科ハスNelumbo nuciferaの種子、「ハスの実」のお話です。
今年の9月上旬のハスの葉です |
小野蘭山は『本草綱目啓蒙』の果之六・水果類の「蓮藕(れんぐう)」の項目でこう述べています。ちなみに、蓮房(れんぼう)とはハスの花托のことです。
「蓮実(れんじつ):蓮房の中にある実である。『蓮肉(れんにく)』とも呼ばれている。未熟の時は柔らかく、生で食べられ、味は甘い。
蓮実を破ると中に青い芽があり、これを『薏(よく)』という。『薏』は味が苦いため、薬にするには、この『薏』を去って用いる。
蓮実は秋になって熟すれば皮が硬くなって石のようになる。」
『薏』とは、ハスの実の中の胚芽の部分を指します。
『薏』とは、ハスの実の中の胚芽の部分を指します。
今年9月上旬のハスの花托の様子です。「蓮実」はまだ甘そうですね。 |
今年10月上旬のハスの花托の様子です。「蓮実」はすでに硬そうですね。 |
漢方では、主として蓮実を薬用とし、生薬名「蓮肉(れんにく)」として利用します。
『神農本草経』では、ハスは巻上に「藕実茎(ぐうじつけい)」として登場します。「藕実茎」とは、蓮実が入った状態の蓮房と茎の全体を指すようです。
「味は甘い。内臓を補って、神経を養う。気力がつき、諸々の病を除く。長期に内服すると、身体が軽くなり、老化を防ぐ。飢えないで、長寿になる。」
「蓮肉」が入った有名な漢方処方に、「清心蓮子飲(せいしんれんしいん)」がありますが、「こころの熱」をさますために、甘い「蓮肉」では少し効果が弱いかなというときには、ハスの実の胚芽のように苦い「黄連(おうれん)」という生薬を少しだけ加味することがあります。T.K.