おとといのブログ、昨日のブログに引き続き、NHK EテレのTVシンポジウム「めざせ!健康長寿~中高年からの医療と漢方~」の内容のポイントをまとめました。
漢方薬の有効性について、大阪大学大学院特任教授の萩原圭祐先生が、番組の後半で解説されていました。
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東洋医学では、下記のような加齢による症状をひとまとめにして「腎虚(じんきょ)」という状態から起こる症状と呼んでいます、と萩原先生が話されていました。
脱毛、白髪 難聴、耳鳴り 皮膚の乾燥、かゆみ
腰痛、骨粗鬆症 排尿障害、失禁 下肢の冷え、だるさ
(「腎虚(じんきょ)」とは、「腎(じん)」という仮想の臓器の働きが足りなくなった状態という意味です。)
このような「腎虚(じんきょ)」という状態に対して、東洋医学では「補腎薬(ほじんやく)」という種類の処方が適応され、代表的な漢方薬として「牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)」が紹介されていました。
番組では「牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)」が効いた、ある80歳代の女性の方の臨床経過が紹介されていました。
この方は、「 腰から足の先までむくみがあり、関節痛もあり、歩こうとすると足の裏に砂利があるような感がして歩けない。」という症状でお困りだったそうです。
そこで、萩原先生は「腎虚(じんきょ)」の状態だと判断して、「牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)」を処方されたそうです。
すると、驚いたことに、「1ヵ月ほど内服したら、足のむくみや痛みが少しずつ消えてきて、その後も内服を続けていたら、現在ではむくみや痛みは無くなり、無理なく歩けるようになった」そうです。
さらに、萩原先生は、老化促進マウスという、早期に老化症状を起こすマウスに「牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)」を飲ませる実験を行ったところ、飲ませないマウスに対して、筋肉量が保たれていたそうです。
このように「フレイル」という虚弱状態に対して、栄養や運動という対策に加えて、漢方薬を追加することで、より効果を上げることができることが分かりました。
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以上、TVシンポジウム「めざせ!健康長寿~中高年からの医療と漢方~」の内容のポイントだけご紹介致しました。
いわゆる「フレイル」という虚弱状態の方には、今回の番組で主に紹介された「牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)」以外にも、下記のような漢方薬が使用されることがあり、当診療所でもお一人お一人の身心の状態に合わせて処方させて頂いています。
四君子湯(しくんしとう)
六君子湯(りっくんしとう)
補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)
人参養栄湯(にんじんようえいとう)
大防風湯(だいぼうふうとう)
八味地黄丸(はちみじがおうがん)
六味地黄丸(ろくみじおうがん)
などなど、書き切れません。(T.K.)