先々週のブログの『養生訓・総論
上』(6)で『内欲(ないよく)』と『外邪(がいじゃ)』の説明が出てきましたが、今日は、これらの内欲に打ち勝つコツ、外邪を防ぐコツについてのお話です。
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身体を傷めつける敵は、身体の内外にたくさん存在しています。
『内欲』、すなわち、飲食の欲、好色の欲、睡眠の欲が強かったり、あるいは、怒り、悲しみ、憂いなどの感情が強いと、身体が傷みます。これらは皆、私達の身体の中から生じて、身体を傷める欲なので、『内なる敵』と言えましょう。
『外邪』、すなわち、風、寒さ、暑さ、湿っぽさの四つの環境因子は、身体の外から入りこんできて、身体を傷めるものなので、『外なる敵』と言えましょう。
最も怖いのは、『内欲』の飲食の欲、好色の欲が昂じて、『外邪』を身体に引き入れることです。人の身体は、金属や鉱物ではなく、弱く破れやすいものです。しっかり用心をして、いつも内外の敵に勝つ戦略を持っていなければなりません。敵に勝たなければ、必ず攻め滅ぼされて、健康な身体を失ってしまいます。(写真の下に続く)
寒さに耐えて咲くクリスマスローズ Helleborus niger (先週末の千葉大学柏の葉キャンパス薬草園から) |
(写真の上からの続き)
正しい養生法を修得すれば、内外の敵に勝って、自分の身体を健康に保つことができます。生まれ持った生命力が強くても、正しい養生法を知らないと、健康な身体を保つことができません。
『内なる敵』に勝つコツは、心を強くして、欲を抑えることです。飲食、好色などの欲の通りに行動しないように、心を強くすることが必要です。いくさの時に、強くて勇気のある武将が、敵を押しつぶして勝つようにすべきです。
『外なる敵』に勝つコツは、戦わないで早めに防ぐことです。いくさの時に、城の中にこもり、四方に敵がいても油断なく敵を防ぎ、城を堅く守るようにすべきです。風、寒さ、暑さ、湿っぽさの『外なる敵』に出会ったら、早く逃げましょう。これが、『外なる敵』を防ぐ基本的な兵法です。
昔の人も「風を防ぐには、矢を防ぐようにする」と言っています。特に、「風と寒の邪」には、最も注意しなければなりません。長い時間、「風と寒の邪」にあたっていてはいけません。
『内なる敵』に対しては、これらに勇ましく立ち向かって、心を強くして勝つべきです。
『外なる敵』に対しては、これらを畏れて、早く逃げるべきです。勇ましく立ち向かってはいけません。
(貝原篤信 編録『養生訓』巻第一 総論 上から)
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今年のインフルエンザも、千葉県では、今週から来週がピークのようです!
貝原益軒が「風と寒の邪」と言っているのは、インフルエンザのような感染症のことですので、このブログをお読みの皆様も、「油断なく敵を防ぎ、城を堅く守るように」しっかりと予防策を行って下さい。
また、残念ながらインフルエンザにかかってしまった方は、1日、2日くらいは、「勉強をしたい」「仕事をしたい」という欲を抑えて、しっかり身体を休ませて、適切なお薬を使って早く良くなさって下さい。おだいじに。(T.K.)
底本は、千葉大学附属図書館によりデジタル化され一般公開されている『養生訓』(貝原益軒の没後百年にあたり刊行された版)です。