漢方に用いられる生薬は、薬用部位を洗ったり、乾燥して保存性を高めるほかに、熱を加えたり、砕いたりして薬効を高めることもしてきました。このことを修治(しゅうち、しゅうじ)といいます。特に、中医学では、生薬を幾通りにも修治して、漢方調剤に用いています。当院においても、いくつか生薬を炒ったり、細かくしたりして提供しているものがあります。
修治の例として、地黄という生薬があります。ゴマノハグサ科のアカヤジオウ等の根です。
アカヤジオウ |
熱をかければかけるほど黒くなっていく生薬で、蒸したものの方が色が濃いのがお分かりかと思います。
地黄と熟地黄 |
そして、熱をかけると性質が若干変わります。
「乾地黄、地黄」 味:甘苦 性:寒 補陰、補血、止血
「熟地黄」 味:甘 性:微温 補陰、補血
基本的に補陰、補血作用があり、いわば体の潤いや栄養分を補うのですが、冷えを伴いじっくり補う必要があるときは熟地黄を選びます。熱がこもる傾向にあるときは乾地黄を選びます。
食材も同様に、日干ししたものや熱を加えたものは、性質が寒から熱の方に傾きます。
天然のまま使うと思われがちな生薬ですが、加工法ひとつとっても先哲の英知が垣間見られます。(S)