貝原益軒が「体から生まれる欲を制御することの大切さ」について語ってます。
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人間には、口、腹、耳、目からそれぞれ生まれる「欲」がありますが、これらの中にはかえって体に害をもたらすものも多くあるのです。
昔の人の教えには、養生法を極めた言葉が残っています。
孟子(もうし)の言う「欲を寡(すくな)くする。」という言葉がこれにあたります。
宋の時代の王昭素(おうしょうそ)も、「体を養うには、欲を寡(すくな)くすることが一番大切だ。」と言っています。
『省心録(せいしんろく)』にも、「欲が多いと、命を傷つける。」と書いてあります。
人間の病気というものは、皆自分の体から生まれる「欲」をそのままにして、慎まないことから起こります。
養生法を行おうとしている方は、いつもこの点を戒めとして下さい。
(貝原篤信
編録『養生訓』巻第一 総論 上から)
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孟子(もうし)は、皆様ご存じの、中国・戦国時代の儒学者です。
王昭素(おうしょうそ)は、中国・宋の時代の著明な学者です。彼は、70歳を過ぎて宋の初代皇帝である趙匡胤に招かれ、養生や治世の方法についての見識を語ったと言われています。
『省心録(せいしんろく)』は、中国・宋の時代の詩人、林逋(りんぽ)が詠んだ詩をまとめたものとされており、江戸時代にも読まれていたようです。(T.K.)
底本は、千葉大学附属図書館によりデジタル化され一般公開されている『養生訓』(貝原益軒の没後百年にあたり刊行された版)です。