貝原益軒が「欲が好むままには行動しないことの大切さ」について、引き続き語っています。
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人の耳・目・口・体には、それぞれ好む欲があります。聞きたい・見たい・飲みたい・食べたい・色を好むという欲です。これらを嗜欲(しよく)と呼びます。嗜欲とは、「何かを好んで、むさぼる。」という意味です。
飲みたい・食べたいなどという欲を抑えないで、自分の欲が好む通りに行動すれば、節度を過ぎてしまい、結局自分の身体を損なうことになります。全ての悪(あく)は、自分の欲が好む通りに行動してしまうことから起こるのです。
耳・目・口・体が好む欲を早めに抑えて、心の持ち方を変えて、欲が好む通りには行動しないことが欲を克服する方法です。もろもろの善(ぜん)は、自分の欲が好むままには行動しないところからもたらされるのです。
したがって、自分の欲が好む通りに行動することと、自分の欲が好むままには行動しないことが、悪と善とを分ける分岐点になります。
養生法を実践しようとする方は、ご自分の耳・目・口・体から欲が起こった際には、よく用心して、自分の欲が好むままには行動しない習慣を持つことが大切なのです。
「恣(欲が好むままの心)」の一字は捨てて、「忍(動じない心)」の一字を守って下さい。
(貝原篤信
編録『養生訓』巻第一 総論 上から)
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貝原先生は、上記のようにおっしゃっていますが、私などは「口が好む」美味しい食べ物は、ついまた一口と、口に運んでしまいます。。。(T.K.)
底本は、千葉大学附属図書館によりデジタル化され一般公開されている『養生訓』(貝原益軒の没後百年にあたり刊行された版)です。