新型肺炎と漢方薬(初期)

2020年1月29日水曜日

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昨日のブログに引き続き、中国政府による「新型コロナウイルス肺炎の診療ガイドライン案・第4版」から、新型肺炎の初期に使われる漢方薬についてご紹介致します。

漢方薬による補助療法は、あくまで現代医学的な補助療法がきちんと行われていることを前提とする治療法であることはご了解下さい。


*****以下、中国政府による「新型肺炎診療ガイドライン案・第4版」の一部を翻訳*****

新型肺炎に対する漢方薬治療(初期)

臨床症状:さむけと発熱(熱が出ないこともある)、倦怠感。
のどが乾燥してからぜきが出る、胸苦しくなる。
胃のあたりがつかえる感じがして、時にムカムカ吐き気がしたり、大便が緩くなる。
舌の色は正常だが、白いコケがべっとりと付く。

東洋医学的解釈(※):冷たい湿気(しっけ)により肺がふさがれている。

煎じ薬に入れる生薬として薦められるもの麻黄(まおう)、羌活(きょうかつ)、藿香(かっこう)、蒼朮(そうじゅつ)、厚朴(こうぼく)、草果(そうか)、陳皮(ちんぴ)、檳榔子(びんろうじ)、生姜(しょうきょう)

*****引用は以上*****

※ 東洋医学的解釈とは、臨床症状を東洋医学的に解釈したもので、この解釈に基づいて、処方や生薬が選ばれます。


今回は、「冷たい湿気(しっけ)により肺がふさがれている」と解釈されていますので、肺から冷たい湿気を追い出すような生薬が選ばれていて、9種類とも体を温める生薬です。

麻黄(まおう)とは、マオウ科シナマオウなどの地上茎で、日本でも感冒に使われる葛根湯(かっこんとう)にも入っている生薬です。体を温めて、気管支を拡張して、呼吸を楽にする作用があります。
マオウ科マオウ属シナマオウ(千葉大学柏の葉キャンパス薬草園)
羌活(きょうかつ)は、セリ科キョウカツの根茎と根です。当診療所ではふだんは頭部や関節などに慢性的な痛みがある方にしばしば処方しておりますが、中国では感冒による頭痛や関節痛にも使われるようです。

藿香(かっこう)は、シソ科パチョリの地上部です(シソ科カワミドリの地上部で代用できます)。体から不要な湿気を追い払い、胃腸の働きを助けて、体のだるさを緩和する作用があると言われています。
シソ科カワミドリ属カワミドリの花(千葉大学柏の葉キャンパス薬草園)
※本ガイドラインで薦められている漢方処方は日本では一致したものはありませんが、もし医療用漢方製剤(医師が処方できるエキス剤)147種類の中から1種類選ぶとしたら神秘湯(しんぴとう)でしょうか。また、一般用漢方製剤294種類の中から1種類選ぶとしたら藿香正気散(かっこうしょうきさん)が該当すると思われます。

※なお、日本国内で新型肺炎の発症を疑った場合は、直接クリニックや診療所などの医療機関には受診せず、まず速やかに管轄の保健所に連絡し、指示に従って下さい。(T.K.)

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