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昨日のブログに引き続き、中国政府による「新型コロナウイルス肺炎の診療ガイドライン案・第4版」から、新型肺炎の重症期に使われる漢方薬についてご紹介致します。
漢方薬による補助療法は、あくまで現代医学的な補助療法がきちんと行われていることを前提とする治療法であることはご了解下さい。
*****以下、中国政府による「新型肺炎診療ガイドライン案・第4版」の一部を翻訳*****
新型肺炎に対する漢方薬治療(重症期)
臨床症状: 自力で十分な呼吸をすることが困難となり、体を少し動かしてもゼーゼーし、時に補助換気(※)が必要になる。
やがて、意識障害やせん妄(※)を来たす。
危篤状態になると、冷や汗が出て、四肢が冷たくなる。
舌の色は暗紫色となり、ベットリとした厚いコケあるいはカラカラに乾いたコケが付く。
東洋医学的解釈(※):正常な意識を維持する機能が閉じ込められ、かつ、体温を維持する機能が体から逃げ出してしまう。
処方:蘇合香丸(そごうこうがん)あるいは安宮牛黄丸(あんぐうごおうがん)を、下記の煎じ薬と一緒に投与する。
煎じ薬に入れる生薬として薦められるもの:人参(にんじん)、附子(ぶし)、山茱萸(さんしゅゆ)
*****引用は以上*****
※ 補助換気とは、自力で十分な酸素を肺から取り込めなくなった方に対して、人工呼吸器などの機械を使って人工的に呼吸を補助する方法です。
※ せん妄とは、意識がもうろうとして、意味不明なことを口走ったり、手足を無意味に動かしたりする状態です。
※ 東洋医学的解釈とは、臨床症状を東洋医学的に解釈したもので、この解釈に基づいて、処方や生薬が選ばれます。
今回は、「正常な意識を維持する機能が閉じ込められ、かつ、体温を維持する機能が体から逃げ出してしまう」と解釈されていますので、正常な意識を回復する薬剤と、体温を維持する機能を回復する薬剤が選ばれています。
蘇合香丸(そごうこうがん)と安宮牛黄丸(あんぐうごおうがん)とは、12〜15種類の生薬の粉を丸剤にしたものです。犀角(クロサイのつの)、麝香(ジャコウジカの香り袋)、牛黄(ウシの胆嚢にできた結石)などが使われています。中国では意識に障害が起こった時に使われている処方ですが、日本国内では医療用漢方製剤としては扱われていませんのでご注意下さい。
人参(にんじん)とは、いわゆる薬用人参のことで、ウコギ科オタネニンジンの根です。附子(ぶし)は、キンポウゲ科トリカブト属植物の塊根に減毒処理を施したものです。体温を維持する機能を回復させる目的で、人参(にんじん)と附子(ぶし)が一緒に使われます。
山茱萸(さんしゅゆ)は、ミズキ科サンシュユの果肉です。当診療所では、ふだんは足腰のだるさや頻尿症状などに対して処方しておりますが、ここでは人参と協力して汗を止める目的で使われているものと思われます。
ミズキ科ミズキ属サンシュユの花(千葉大学柏の葉キャンパス・薬草園・春) |
ミズキ科ミズキ属サンシュユの果実(千葉大学柏の葉キャンパス・薬草園・秋) |
※なお、日本国内で新型肺炎の発症を疑った場合は、直接クリニックや診療所などの医療機関には受診せず、まず速やかに管轄の保健所に連絡し、指示に従って下さい。(T.K.)
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