ムラサキの根は、強い紫色を呈するシコニンを含有する生薬「紫根(しこん)」として用いられています。『神農本草経』では紫草と呼ばれ、「胸部と腹部の邪気を払い、黄疸などを治し、胃腸の働きを助け、体を元気にする。」と記載されています。日本では、かの華岡青洲(1760-1835)が考案した紫雲膏(しうんこう)という軟膏の主成分の一つとして、現在でも臨床的によく使用されます。
小野蘭山(1729-1810)は『本草綱目啓蒙』で「葉は細長く形は旱蓮草(タカサブロウ)の葉に似て、互生する。夏になると、枝の先の葉間に白い花が咲く。五弁花で形は梅の花に似て、大きさはおよそ三分(さんぶ)。花の内には蕊(しべ)は認められない。」と記録しています(一分は約3 mm)。
同じムラサキ科のヘリオトロープやワスレナグサなどの花の色は、まさに紫系の色なのですが、ムラサキの花がこんなに純白なことにはびっくりしました。進化の途中で、ムラサキの花に何か突然変異が起きてしまったのでしょうか? T.K.