「ナス科ヒヨドリジョウゴ Solanum lyratum(現在の生薬名:白毛藤)」について、江戸時代の本草家の先生たちはどのようにコメントしているのでしょうか?
ナス科ヒヨドリジョウゴ Solanum lyratum |
『養生訓』で有名な江戸時代の本草学者である貝原益軒は、『大和本草』(やまとほんぞう:1709年刊行)の中で、下記のように述べています。
「白英ホロシ:葉は牽牛(アサガオ)に似て、冬に紅色の実がつく。庭に植えて楽しむと良い。宿根性であり、春にまた芽が出る。つるは冬でも枯れないで、春になると葉が出る。和名はホロシと言い、俗にヒヨドリジヤウゴと言う。」
ところが、その百年後の本草学者である小野蘭山は『本草綱目啓蒙』(1805年跋)で、こう述べています。
「蜀羊泉ホロシ:つるには毛があり、牽牛(アサガオ)に似ている。葉にも毛があり、形は菊の葉に似て切れ込みがある。夏に葉の間から小枝が出てきて、花が咲く。花弁の色は白色で蕊は黄色。形はトウガラシの花に似ている。丸い実ができ、秋から冬に熟して深紅色になる。ヒヨドリジヤウゴとも呼ばれている。」
さらに蘭山先生は、益軒先生に追い打ちをかけています。
「白英マルバノホロシ:白英はホロシではない。白英は蜀羊泉の類似種で、葉に切れ込みがないので、マルバノホロシと呼ばれている。宿根性であり、春に芽が出て、繁茂する。つるにも葉にも毛がない。葉は丸く長い。夏に花がつくが、花弁の色は紫色で、蕊は黄色。秋になって実が熟して深紅色の丸い実ができる。実が長くなって、トウガラシの形に似ることがあるので、ウマノナンバンとか、イヌノナンバンとか呼ばれることがある。」
現在「ナス科マルバノホロシSolanum maximowiczii」という名前の植物はあります。
現在「ナス科マルバノホロシSolanum maximowiczii」という名前の植物はあります。
益軒先生と蘭山先生は、 ヒヨドリジョウゴの生薬名をめぐって、見解が全く異なっていますね。
さて、どちらの先生が正解なのでしょうか???
それとも、お二人とも正解とは言えないのでしょうか???
T.K.