今回から養生に関連して、具体的なお話に入っていきます。
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(貝原篤信 編録『養生訓』巻第一 総論 上から)
養生法の最初のポイントは、自分の体を損なうものを取り去ることです。自分の体を損なうものを、『内欲(ないよく)』と『外邪(がいじゃ)』と呼びます。
『内欲』とは、飲食の欲、好色の欲、睡眠の欲、好き勝手にしゃべってしまう欲と、「七情(しちじょう)」を指します。「七情」とは、喜び、怒り、憂い、思い、悲しみ、恐れ、驚きの七つの感情のことです。
『外邪』とは、風、寒さ、暑さ、湿っぽさの四つの環境因子を指します。
『内欲』が(体の中で増えすぎないように)コントロールし、『外邪』が(体の中に入らないように)注意して防ぎましょう。こうすれば、「元気」を損なわないで、病気にならず、天から頂いた寿命を長く保つことができるのです。
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貝原益軒は、東洋医学に精通していましたので、この『養生訓』にも東洋医学の概念がいっぱい登場してきます。
中国の秦漢時代に成立したとされている東洋医学の基本テキスト『素問(そもん)』の第五章・陰陽応象大論(いんようおうしょうたいろん)には、「人には、五つの感情が生じる。すなわち、喜び、怒り、悲しみ、憂い、恐れである。」「天には、五つの働きがある。すなわち、寒さ、暑さ、乾燥、湿気、風である。」と述べられています。(T.K.)
底本は、千葉大学附属図書館によりデジタル化され一般公開されている『養生訓』(貝原益軒の没後百年にあたり刊行された版)です。