不思議な形の花が咲いていました。キカラスウリTrichosanthes kirilowii Maximowicz var. japonicum Kitamuraの花です。
小野蘭山は『本草綱目啓蒙』の草之七・蔓草類の「栝楼(かろう)」の項目でこう述べています。
「春に旧根から芽が出る。つるがたいへん長く、葉は互生する。葉の形は円形で、角ばった部分が5個か7個ある。胡瓜(キウリ)の葉に似て、毛茸(こまかい毛)は無く光沢がある。葉一枚ごとに数本のヒゲが伸びて物にまとわりつく。
5月になると、葉の間に白い花が開く。花の根本は筒状だが、末梢では円形に広がり5枚の花弁ができる。そして、洛陽花(サツマナデシコ)の花弁に似て、花弁の先端が細く分かれ、乱れた糸の様になる。」
まさに、花びらの先は「乱れた糸」という表現が当たっていますね。ナデシコの花びらの比ではありません。
漢方では、キカラスウリまたはオオカラスウリTrichosanthes bracteata Voigtの根を皮層を除いて乾燥し、「栝楼根(カロコン)」として利用します(第十六改正日本薬局方)。また、キカラスウリまたはオオカラスウリの種子を「栝楼仁(カロニン)」として使います(日本薬局方外生薬規格2012)。
『神農本草経』では、「栝樓(かろう)」として中巻に登場します。
「のどが渇いた状態、胸部などが熱をもって煩わしく張る状態、身体に熱がこもる状態に用いる。身体の弱い部分を補って、胃腸の働きを助け、傷を治す。」と記載されています。
『神農本草経』の「栝樓(かろう)」は、きっと日本薬局方の「栝楼根(カロコン)」のことですね。T.K.