「今は昔」で始まる「今昔物語」は12世紀頃に編纂された説話集で、天竺(インド)・震旦(中国)・本朝(日本)の3部に分かれています。
芥川龍之介が本朝編の逸話をもとに「芋粥」「鼻」などの作品を残したことでも知られています。
興味深いのは説話のなかに、現代でも通じる「漢方の処方名」が出てくるのです。
女盗賊に惑わされ鞭で打たれた後に、飲まされたのはかまどの土。今でも「黄土湯」として止血目的で利用されています。
他にも老薬師が美貌の女性に邪な(よこしま)気持ちを抱きながら大腿に出来た腫れ物の治療に使ったのが「升麻湯:しょうまとう」や「猪蹄湯:ちょていとう」なのですが、これらの薬も同様に治療に用いることが出来ます。
もちろん、患者さんにとって苦痛が少なく早く治るのが先決ですので、漢方を最優先に考える必然性はありません。しかし、平安後期頃に記された文献にある処方が、今も生き続けているのはちょっとした「驚き」です。
「色々試したけれど、今ひとつ」という場合に、もしかしたら漢方が役立てるかもしれません。(Y)