中華料理などでよく目にするのは紅色の「クコの実」ですが、薬草園ではいま「クコの花」を見ることができます(ナス科のクコLycium chinense)。
「唐グコは、葉は大きくトゲは少ない。実は丸く、熟すと紅色になり味は甘い。また、実がやや長く尖るものもある。」
蘭山先生の解説にしては、クコの花についての説明がなく、全体にそっけない感じですね。クコの木を実際に観察する機会が少なかったのでしょうか。
『神農本草経』では、「枸杞(くこ)」という項目が上巻にあります。
「味は苦く、性質は寒。内臓の邪気、熱にあたって喉が渇く状態、全身のしびれ痛みに用いる。長期に服用すると、筋肉や骨がしまって、身体が軽くなり、老化予防になる。」と書かれています。
味は苦いと書いてありますので、『神農本草経』の「枸杞(くこ)」とは、きっと「地骨皮(ジコッピ)」のことなのでしょう。
クコの実としてはっきりわかるように登場したのは、おそらく『名医別録』です。『名医別録』にも「枸杞(くこ)」という項目が上品にありますが、ここにはきちんと「根は大寒、子は微寒。無毒。」と区別して書かれています。ただし、味に関する記載を見つけることはできませんでした。T.K.